もう一度、通勤手当について考えてみる…

もう一度、通勤手当について考えてみる…

2024年08月06日(火)8:23 AM

通勤手当は、多くの会社で支給されていますが、支給するか否かについて法律で定められているわけではありません。また支給額や支払方法なども雇用主の裁量で決めることができます。

従業員の負担軽減や、人材確保の観点で考えると支給することが望ましい通勤手当ですが、どのようなことに留意して支給すれば良いのかなど、紹介していきます。

 

通勤手当の定義

通勤手当とは、従業員が通勤するためにかかる費用を会社側が補填するために支給するものです。具体的には、電車、バスなどの通勤定期代や、自転車や自動車などで通勤する人への現金支給などがこれにあたります。

また通勤手当は、課税対象とされる残業手当や役職手当などとは異なり、所定の金額を超えるまで所得税の課税対象になりません

つまり、裏を返せば通勤手当のうち「実費相当額」を超える部分については、給与や残業手当等と同様に課税対象となってしまいます。

では、通勤手当を非課税として取り扱うことができる要件や限度額にはどのようなものがあるのでしょうか。

 

通勤手段ごとの課税されない金額

①公共交通機関を利用する場合

電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤する場合において、課税されない金額は「1か月あたりの合理的な運賃等の額(上限150,000円)」とされています。

通勤にかかる時間や距離を考慮して、最も経済的かつ合理的なルートで通勤する必要があります。

また、新幹線のグリーン車等を利用した場合は、その利用分の金額は合理的と認められず、所得税の課税対象となるため注意が必要です。

 

②自動車や自転車等の交通用具を使用する場合

交通用具を用いる場合においては、通勤距離(片道)に応じて課税されない金額が変わってきます。

 

通勤距離(片道)  課税されない金額

・55km以上        31,600円

・45km以上55km未満  28,000円

・35km以上45km未満  24,400円

・25km以上35km未満  18,700円

・15km以上25km未満  12,900円

・10km以上15km未満  7,100円

・2km以上10km未満   4,200円

・2km未満         (全額課税)

 

上記のとおり、片道の通勤距離が2km未満の場合は全額が課税の対象となるため注意が必要です。

また、このような手段で通勤する労働者に対して、定額で通勤手当を支給しているケースでは、通勤距離によって、非課税の通勤手当と課税対象の通勤手当の両方が発生する可能性があるためここも注意が必要です。

 

③①と②を両方利用する場合

公共交通機関と交通用具の両方を利用する場合は、「1か月あたりの合理的な運賃等の額」と②の表の金額の合計額(上限150,000円)が課税されない金額となります。

 

社会保険料の算定における通勤手当

上記では、所得税法上における通勤手当の取り扱いを確認しました。

所得税法上では、通勤手当は「交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるもの」であるため、要件を満たす金額については非課税となります。しかし、社会保険の定義する報酬においては下記のとおり扱いが異なります。

 

厚生年金保険法の第三条では、社会保険の対象となる報酬を「賃金、給料、俸給、手当、賞与、その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのものをいう。」と定めており、通勤手当も報酬とみなされます。そのため、社会保険料の算定に用いる標準報酬月額には通勤手当を含めて計算を行います。

 

そのため、通勤手当の支給金額が大きくなると、社会保険料の控除額が大きくなってしまう可能性があります。

 

従業員の負担を軽減する通勤手当ですが、所得税法上で非課税とするためには要件を満たす必要があり、社会保険においては支給が大きくなると標準報酬月額の等級が上がり、社会保険料が増えてしまう恐れがあるため、それらの点に留意して、通勤手当の支給方法を検討することをおすすめいたします。

 

※ この記事の内容は投稿日時点での情報となります。今後法改正などで変更される可能性がありますのでご了承の上、ご活用頂きますようお願い致します。

 

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