年金に対する「誤解」教えます!!
昨年より新聞の紙面で、「厚生年金の適用逃れ… 強制加入」についての記事を見ることが多いのですが、
城西経営支援事務所にも「厚生年金保険・健康保険の加入状況について」という書類が送られてきて、どう対応すれば良いか?? という相談が急増しています。
一部の相談者(=事業主様)によると、シブシブではあるが加入をするのは仕方ないか… といった思いではあるが、従業員から「今さら年金に加入しても将来もらえないのでは…」とか、「手取りが減るから社会保険には加入したくない。」といった反発があってどうしようもないというのが実情のようです。
先日、ある事業主様より「従業員を説得してほしい」との要望があり、従業員様を集めて「社会保険加入の説得」に使わせて頂いた経済コラムニストである大江英樹氏のコラムがあるのでブログでも紹介したいと思います。(ちなみに、この資料が功を奏してか?? 不明ではありますが、全従業員様が社会保険に加入することを承諾して頂けました。)
≪年金保険料を払わないとあなたは損をする?? 年金に対する「誤解」教えます!!≫
経済コラムニスト 大江英樹氏 (一部こちらでアレンジを加えております)
「年金」って評判悪いですよね??
年金、特に国が運営している公的年金については、いつの時代でもあまり評判がよくありません。
特に制度を運営している厚生労働省、そして日本年金機構はその前身である社会保険庁時代からいくつもの不祥事が取り上げられてきました。
古くはグリーンピアのように、年金積立金を投入した非常に効率の悪い投資と言われた案件から、2007年に大きく取り上げられた年金記録問題、そして最近では2015年の5月に起きた加入者の個人情報流出問題など、数え上げるとキリがありません。
年金というのは、私たちにとっては老後の生活を賄う大切な手段であるからこそ、こういった問題が大きく取り上げられるのですが、こういう不祥事は別に年金だけに限らず、ほかの官庁や民間企業においても発生しています。
組織というのは人間が運営していくわけですから、多かれ少なかれこういう不祥事がつきまとうものです。でも、たまたま何らかの不祥事があったからといって、その組織が作っている製品やサービスが、ぜんぶ否定されるというわけではありません。 人間は何かひとつよいことがあると、全面的に賞賛してしまいがちになることがあり、 逆に何かひとつ問題があると、そのほかのものもすべて悪いと感じてしまうものです。年金については、まさにこのパターンと言えるでしょう。
ところが世間で言われているほど、公的年金というのは頼りないものでも悪いものでもありません。よく話題に出る公的年金に関するさまざまなウワサについて実際のところはどうなのかを考えてみましょう。
「公的年金は赤字」は本当か??
まず、最もよく言われるのが「公的年金は赤字だ!」ということです。
どういう状態のことを赤字だと言うのかにもよりますが、仮に年金の支払いが賄えなくて、借金して支払っているという意味であるとすれば、年金は赤字というわけではありません。赤字なのは国の一般会計です。赤字だからこそ毎年国債を発行して支出の穴埋めをし、その借金の合計が1000兆円以上もあるのです。
年金の場合はどうかと言えば、借金どころか貯金が180兆円余りあります。 これが年金特別会計です。
日本の年金制度は単年度決済で、毎年入ってくる年金保険料が年金を支払う原資になっています。ところが昔と違って、今は高齢者の割合が多くなってきたために、年金自体の毎年の“入”と“出”で言えば、“出”のほうが多くなっています。 毎年の収支ということで言えば、これは確かに赤字です。
でも今までの貯金がありますから、赤字と言っても国の一般会計と違ってすぐに借金する必要はなく、貯金を下ろしていけばいいのです。現実に毎年この貯金の中から5兆~6兆円ぐらいが補填されています。
もちろん、何もせずにただ貯金を取り崩していくだけなら、いつかは蓄えがなくなってしまいます。そこでこの貯金が減らないようにするために、年金の積立金を運用して増やしています。ところがこの「年金の運用」にも、どうやら誤解があるようです。
GPIFは大丈夫か??
公的年金の運用は「年金積立金管理運用独立行政法人」というところが行っています。
長い名前なので一般的には英語名の頭文字をとってGPIFと言われており、最近はこの運用改革が話題になっています。 このGPIFが年金積立金を自主運用し始めたのが2001年ですが、2014年末までの13年間で上げた利益の累計額は47兆円余りあります。 ここ数年の年度別に見ても、リーマンショックのあった2008年度こそ年間で9.3兆円ぐらいのマイナスが発生していますが、2009年度から昨年度までの5年間では、2010年度に3000億円のマイナスを出した以外は、毎年プラスの利益となっています。
アベノミクスが始まった2012年、2013年はいずれも、10兆円以上の利益が上がっています。さすがに一昨年の7~9月は日経平均が大幅に下落した影響で9兆円以上のマイナスが出ていると言われていますが、これはマーケットの変化に伴う現象ですからやむをえません。10月に入ってからは再び回復基調にあるので、年間を通じてみると影響は均されるのではないかと思います。つまり年金資金の運用自体は、決してうまくいっていないというわけではないのです。
ところがマスコミなどでは、リーマンショックの年のように、大きくマイナスが出た時だけセンセーショナルに報道するものですから、「どうやら年金の運用はうまくいってないらしい」という印象が植え付けられてしまうのです。 でも実際にGPIFのホームページを見れば、今までの運用成果が全部公表されていますから、問題はないということがわかるはずです。
未納者が4割もいるから、年金は破綻寸前??
「年金の未納者は4割にも達する」と報道されていますが、これも実はかなり誤解を招く表現です。
この表現だけ見ると、国民の4割が未納だと思ってしまいます。でもここでいう4割というのは、いったい何の4割なのでしょうか?? それは一号被保険者です。
公的年金の加入者数は2013年度で6718万人いますが、その内、自営業や無職、学生といった人たちのことを一号被保険者と言い、その数はおよそ1805万人です。この人たちの年金の納付率が60%なので、払っていない人は残りの40%、つまり722万人ということになります(実際には40%の人がまったく払っていないという意味ではなく、納付月数の割合が60%という意味ですが、ややこしいのでここではまったく払っていないとして計算します)。
ところが、学生で収入が少なかったり生活保護で保険料が払えなかったり、あるいは震災などの災害で収入が途絶えてしまったりした人は、保険料の納付が免除される仕組みになっており、そういう人が同じ2013年現在では606万人ほどいます。すなわち、確信犯的に保険料を払っていない未納の人たちの数は、115万人ということになります。
だとすれば、実際の未納率は115万人÷6718万人で、わずか1.7%です。 これですぐに年金制度が崩壊するということはありません。そもそもこの保険料を払っていない人たちには年金が支給されませんから、これだけをもって年金の財政が大きく悪化するということはないはずです。
年金は「意外と大丈夫で、意外に頼りがいがある」制度
もちろん年金は今後、何があっても大丈夫とか、永遠に安心などと言うつもりはありません。日本の経済成長が続かなければ、社会保障制度も決して安泰とは言えないでしょう。 ただ、年金不安をあおり立てている金融機関や一部のマスコミの言葉に乗って、年金保険料を支払わないということになれば、それは結果としてあなた自身の将来に大きな禍根を残すことになりかねません。
もちろん公的年金だけで、将来、自分の望む生活を維持するというのは難しいでしょうから、これからは自立や自助努力ということが一層求められる時代になることは確かです。でも、その場合でも公的年金というのは、第一の土台となる部分だということはしっかりと認識しておく必要がありそうです。
なお、年金制度の老後年金のみについて言及しましたが、公的年金には障害年金や遺族年金といった機能もあります。障害年金は重度の障害を負い働くことができず、収入を得ることができなくなった場合の生活保障、遺族年金は家族を残し亡くなってしまった場合の配偶者や子供たちの生活保障としての機能があるのです。 人生で損をしないためにも、マスコミなどの報道に惑わされず、年金は「意外と大丈夫で、意外に頼りがいがある」制度だということをきちんと知っておくことが大切です。(2015年11月04日)
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当事務所ではご相談者の状況を踏まえ最善の対処法をご提案しております。自らではなく強制的に加入させられるケースでは、2年前まで遡って保険料を納めることになりかねません。このような死活問題に直面しない為にも当事務所の活用をぜひご検討下さい。
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