意外と知られていない面接時に質問してはいけないこと
採用時の面接において、意外と知られていない不適切な質問について
「あなたの尊敬する人は誰ですか?」… この質問はアウトです。
私の顧問先では、面接時の質問で何を質問するのが良いのか悩まれているご担当者が非常に多いようです。
採用にあたり短時間でいかに応募者の性格やスキル、人柄などを見極めるのはたいへん困難なことだと思います。
面接では何でも質問できるというわけではなく、法律で制限されることはないまでも、ある種のガイドラインのようなものがあります。
厚生労働省がガイドラインとして不適切としている質問の例を下記にまとめましたので参考にして頂ければ幸いです。
不適切な質問の例
(1)本籍地
Q あなたの本籍地はどこですか?
Q あなたのお父さんやお母さんの出身地はどこですか?
Q 生まれてから、ずっと現住所に住んでいるのですか?
Q あなたの生まれたところはどこですか?
Q 今の所に来る前は、どこに住んでいましたか?
なぜいけないのか
会社において、人事・労務の管理上で本籍地・出身地の把握が必要なのでしょうか。
人を雇う際、本籍地を調べる習慣は、資本主義発達の初期の段階で、特に同和地区の人たちを差別的に取り扱うためにできあがったものだと言われています。
以来、大正、昭和とこのような人事の習慣は踏襲され、現在においても依然として同和地区住民や外国籍の人(特に在日韓国・朝鮮人)を不安に陥れるとともに、就職の機会均等を奪い、大きな就職差別を引き起こす元凶となっていることを深く認識しなければなりません。
(2)住居とその環境
Q ○○町のどの辺に住んでいますか?
Q 自宅はどの辺ですか?
Q あなたの住んでいる地域は、どんな環境ですか?
Q あなたのおうちは国道○○号線(○○駅)のどちら側ですか?
Q お父さんははじめからそこに住んでいるんですか?
Q どこから引っ越してきたのですか?
Q あなたの自宅付近の略図を書いてください?
Q 家の付近の目印となるものはなんですか、バス停はどこですか?
Q 通学は自宅からですか?
なぜいけないのか
現住所について詳細に聞いたり、略図を書かせるのは「通勤経路の把握」とか「何かあったときの連絡」を理由にしていますが、これらのことは選考段階では全く必要がないことです。選考において現住所の環境について聞くことは、身元調査そのものであり、本籍地を調べることと同様に応募者に不安を与え、特に同和地区住民を排除する目的があるのではないかと疑われることとなります。
(3)家族関係・家庭環境
Q 兄弟(姉妹)は何人ですか。お姉さん(お兄さん)はいますか?
Q 保護者の欄がお母さんとなっていますが、お父さんはどうしたのですか?
Q 保護者の方と名字が異なりますが、どうしてですか?
Q 家族構成を話してください?
Q お父さん(お母さん)がいないようですが、どうしたのですか?
Q お父さん(お母さん)は病死ですか。死因は何ですか。病名は何ですか?
Q お父さんが義父となっていますが、詳しく話してください?
Q あなたの家庭の雰囲気はどうですか。明るいですか?
Q あなたの家庭は円満ですか?
Q 親子の話合いは十分になされていますか?
Q 両親(父親・母親)はどんな人ですか?
Q お父さん、お母さんの学歴は?
Q あなたの兄弟(姉妹)はどこの学校へ行っていますか?
なぜいけないのか
前述の住宅環境を聞くことや家庭の状況を聞くことは、地域や家庭の生活水準を判断したり、親のいない家庭の子供を排除するなど、本人の努力によって解決できない問題を採否決定の基準とすることにもなり、予断と偏見が働きます。
たとえ、採否決定の基準にしないとしても、住宅環境や家庭の状況は応募者によっては答えにくい場合があり、応募者を精神的に苦しめることになり、その心理的打撃は面接態度に現れます。このような状態にある応募者の言動から受ける印象によって、質問に答えやすい人と比較し、採否決定の判断資料とするのは、公正な採用選考を阻害し、応募者の人権侵害と就職差別につながるおそれがあります。
(4)家族の職業・家庭の資産
Q あなたのお父さん(お母さん)は、どこの会社に勤めていますか。役職はなんですか?
Q あなたの家族はどんな職業ですか?
Q あなたの兄弟(姉妹)は働いていますか?
Q あなたのご両親は共働きですか?
Q あなたの家の家業は何ですか?
Q あなたの家族の収入はどれくらいですか?
Q あなたの学費はだれが出しましたか?
Q あなたの家はどれくらいの広さですか?自分の部屋を持っていますか?
Q あなたの家の耕地面積はどれくらいですか?
Q あなたの住んでいる家や土地は自分のものですか、借家ですか。部屋数、畳の数はどのぐらいですか?
Q あなたの家の不動産(田畑、山林、土地)はどのくらいありますか?
なぜいけないのか
これらのことを聞くことは応募者の適性と能力を中心とした採用選考を行うのでなく、本人の責任でない事柄で判断しようとするものです。
家族の職業や収入に関する質問では、「同業者の子弟は企業防衛上困るから」という理由をつけられますが、たとえ親・兄弟(姉妹)であっても機密を漏らさないように入社後教育すべきであり、また「金銭を扱う仕事についてもらうので、親の職業がしっかりしていなければならない」と理由については、「親がこうだから子供もこうだろう」という予断と偏見による誤った考え方により親や家族の状態によって選考をすることになり、経済的に不安定な家庭や母子家庭の子供などを排除する結果となって人権尊重の精神に則った公正な選考とは言えません。
また、採用後企業に損害を与えた場合の保証能力の有無や、家庭の生活程度を判断するために家の資産を聞く企業がありますが、このことも経済的に不安定な家庭の子供などを排除することにつながり、就職差別になることは言うまでもありません。
(5)思想・信条等
Q 学生運動をどう思いますか?
Q 労働組合をどう思いますか?
Q あなたの信条としている言葉は何ですか?
Q あなたは、自分の生き方についてどう考えていますか?
Q あなたの人生観を話してください?
Q 家の宗教は何宗ですか。あなたは、神や仏を信じる方ですか?
Q 政治や政党に関心がありますか?
Q あなたの家庭は、何党を支持していますか?
Q あなたは、今の社会・政治をどう思いますか?
Q 尊敬する人物を言ってください?
Q あなたは、どんな本を愛読していますか?
Q 学校外での加入団体を言ってください?
Q あなたの家(あなた)は、何新聞を読んでいますか?
Q あなたは、元号や西暦表記についてどう考えますか?
なぜいけないのか
思想・信条や宗教、支持政党などは、信教の自由、思想・信条の自由など、憲法で保障されている個人の自由権に属する事柄です。それを直接的あるいは質問の形を変えて間接的に把握して、採用選考に持ち込むことは、基本的人権の侵害にほかなりません。
たとえ質問した側に差別の意図がなくても、その答えによって採否が左右されてしまう恐れがあります。
採用選考から就職差別をなくすためには、質問する側に差別の意図がない場合やその答えを採否の判断に使わなくとも、その質問が差別につながる恐れのある場合には採用選考で行われる質問から排除してゆかなければならないことをご理解ください。
(6)一方の性に限定しての質問
Q 今、つきあっている人はいますか?
Q 結婚の予定はありますか?
Q 結婚、出産しても働き続けられますか?
Q 何歳ぐらいまで働けますか?
なぜいけないのか
男女雇用機会均等法では、募集・採用にあたって男女で異なる取扱いをすることを禁止しています。例えば、女性にだけ結婚後、出産後の就業継続意識を質問すること、男性にだけ幹部候補となる意欲を聞くこと等、男女いずれか一方の性に対してのみ一定の事項について尋ねることや、「女性は結婚したら家庭に入るべき」、「男性なら大きな仕事をするべき」といった固定的な男女役割分担意識に基づいた発言は、男女雇用機会均等の趣旨に違反する質問となります。
(7)その他
Q 彼氏(彼女)はいますか?
Q 当社に知人がいますか?その人とはどういう関係ですか?
Q なぜ大学に行かないのですか?
Q タバコを吸ったことがありますか?
Q 血液型・星座は何ですか?
Q 短所はなんですか?
なぜいけないのか
「彼氏(彼女)」に関する質問は、本来自由であるプライバシーに関すること、本人の適性と能力以外のことに関する不適切な質問であります。
「当社に知人がいるか」の質問については、就職の機会均等の精神に反し縁故・知人採用をしていると受け取られる質問は公平な選考とはなりません。
「大学への進学について」の質問は、家庭の経済的な理由や学力の点から行きたくても行けない者もいることも忘れてはいけません。
「タバコを吸ったことがあるか」の質問は、未成年が喫煙することは犯罪行為であり、質問の意図が分からず、非常に答えにくい質問であります。
「血液型・星座」と性格とは科学的根拠に裏付けられたものではなく、職務能力とは全く関係のないものです。雰囲気を和らげるために質問されることが多くありますが、科学的根拠のないものによって性格を判断されることは応募者に不安を与えます。
また、「短所」だけを質問することは、本人の能力を発揮できるチャンスを否定的に捉えがちになるので、長所について質問するようにしてください。
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